Ado所属事務所社長「日本の音楽=アニソンというイメージになっていくことに危機感がある」
千木良:ひとつは、日本から見えている景色と海外から見えている景色は違うということ。日本のアーティストが世界ツアーをまわっているという話はたびたび聞きますが、まだ土俵にすら立っていないかもしれない、というのが正直な感覚です。極論を言ってしまえば、地方出身のアーティストが東京の端っこの50人くらいのキャパシティのライブハウスをいくつかまわって、「東京進出しました!」と言っているような気分に近いというか。日本から見ているグローバルにおける自国の音楽の位置付けと、現地でのリアルな日本の音楽の位置付けにはギャップがあると思いました。
あと、アニメに頼ってばかりではいられないというのは感じましたね。たとえば、世界的に見て音楽やスポーツといった王道のエンタメの規模と比べると、アニメはまだマニアックなエンタメなんです。とはいえ、グローバルにおける日本の音楽のシェアの規模に比べると、日本のアニメのシェアはとても大きいので、そこに乗ることで通常以上の成果が出ます。ただ、本来音楽が持っている市場規模を考えると、アニメは現時点では天井がとても低いんです。そんななかでアニメありきで戦っていくこと、“日本の音楽=アニメ”というイメージになっていくことに危機感を覚えましたし、戦う土俵を意識しなければいけないとより思いました。