年収600万父「すまん、この収入では大学は無理だ」→奨学金で子供に待ち受ける最悪の結末
一方で、アメリカでは同時多発テロが発生。米英両政府は、反米テロの黒幕であるウサマ・ビンラディン容疑者を首謀者とし、イスラム原理主義テロ組織アルカイダをかくまうアフガニスタンのタリバン政権に対して攻撃。政権は崩壊しました。一方で、パレスチナとイスラエルでテロと報復が続き、当時のイスラエル・シャロン政権は、アラファト・パレスチナ自治政府議長との関係断絶を宣言しました。
なんとなく、20年ほど後の現在にも通じるところのある、2001年。この年に生まれた子どもたちを追跡調査している『21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)』の最新結果(第21回調査/2022年調査)が発表されました。このとき生まれた子たちは、現在21歳。現役で大学に進学していれば、大学3年生になっているような人たちです。
その進路、現況をみていくと、「大学生」が最も多く55.9%。「就職」が24.5%。「四大以外に通っている学生」が8.0%でした。1年前の調査と比べて、「大学生」は56.3%から55.9%と0.4%減少。全国には約300万人の大学生がいるといわれていますから、年間1学年で3,000人ほどの学生が中退している計算になります。
およそ6割弱が大学へと進学していますが、そのうち34.3%が奨学金を利用しています。奨学金利用者の20%強が返済不要の給付奨学金、6割強が返済が必要な貸与奨学金、1割強がその両方を併用しています。
また奨学金を利用する人の割合を親の年収別にみていくと、「年収200万円未満世帯」では50.0%、「年収200万~400万円未満世帯」で66.3%、「400万~600万円未満世帯」で53.3%と、これらの年収帯では奨学金利用が過半数を超えています。年収600万円が「奨学金を利用する/しない」の、ひとつの境界線だといえるでしょう。
奨学金利用者の4割以上が「奨学金返済が負担です」…人生を棒に振る人も
当時、第1子誕生時の父親の平均年齢が30代前半であることを考えると、21歳、大学生3年生の親は、現在50代前半。厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、50代前半のサラリーマン(正社員)の平均給与は、月収で42.1万円、平均年収で693.1万円。また給与分布をみていくと、「大学生の子が奨学金を利用する/利用しない」の境界線となる年収600万円は、推定月収40万円未満*であり、大学生の親の54%に相当すると考えられます。
*50代前半、正社員の男性の賞与が月収の3.46倍であることから推計
できることなら「自分の収入だけで、子を大学に通わせたい」と思う大学生のお父さんは多いでしょう。しかし家計の状況から鑑みると、自身の給与だけでは心許ない……「すまん、俺の収入だけでは大学に行かせられない」というお父さんが、半数以上というのが現状です。
子どもとしても大学に行くためには、「わかった」と奨学金を利用するほか方法はないでしょう。しかし貸与奨学金に返済義務があることを知らず利用する人は意外と多く、結果、返済を延滞してしまうケースが後を絶ちません。返済延滞者の約2割が、「貸与奨学金の返済義務を貸与終了後に知った」と回答。なかには「延滞催促を受けてから知った」という強者も。
労働者福祉中央協議会が行った調査によると、「借入金額」の中央値は285万6,000円で、平均値は324万3,000円。また「毎月の返済額」の中央値は1万4,976.3円、平均値は1万6,880.2円、「返済期間」の中央値は15. 5年、平均値は14. 7年でした。さらに返済の負担感は、45.9%が「何とかやっている」、「苦しい」が44.5%という状況です。
20代のうちは給与は安く、月々1万円強の返済でも大きな負担です。また30代を迎えると、結婚・第1子の誕生とライフステージの変化により、給与は増えても家計が楽になるわけでもなく、やはり奨学金返済に負担感は変わりません。奨学金返済が重荷となり、結婚や資産形成のタイミングに大きな影響を及ぼしたという声は多く、なかには「結婚を諦めました」という人も。
さらに返済が難しく滞納してしまうと、延滞金が課されるうえ、最悪、ブラックリスト入り。今後の人生に大きすぎる影響を与えます。このような結末を辿らぬよう、いまから「奨学金返済を見越したライフプラン」の想定、実行が不可欠だといえます。(抜粋)
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